2018年 10月 30日 ( 1 )

ヴィトンに無造作に突っ込んだ本と上代特殊仮名遣

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信号待ちをしているご婦人のバッグです

ヴィトンのバッグは珍しくも何ともないですが
こんな風に無造作に本を突っ込んだのはあまり見かけません

何となく嬉しくなってシャッターを切りました

今日の大学院講義で奈良時代の上代特殊仮名遣を解説し
それを考察するには中国語の音韻学が不可欠だということを話しました

ひらかな・カタカナが無かったころの万葉仮名の「コ」を表す漢字には
「古・故・姑・孤」などを宛てる甲類と
「己・忌・許・去・巨」などを宛てる乙類とに棲み分けがなされ
甲類乙類の間には使用上の混同は見られません

母音で言えばオ段に甲乙二種類あったことになり
甲類の母音の開きが大きくて 乙類の母音の開きが小さいことは
中国語音韻学によってはじめて説明が可能になります

同じようにイ段に二種類 エ段にも二種類ありました

結局 奈良時代には
①ア②イ甲③イ乙④ウ⑤エ甲⑥エ乙⑦オ甲⑧オ乙の
8つの母音があったことになります

もちろん反論もあって万葉仮名の書き分けは認めるけれど
それが直ちに母音の数とは限らないという人もいます

ただ 8母音説が主流だとは言えそうです

そうすると昭和初期に大槻文彦が『大言海』に書いた語源説
「恋う」の語源は「乞う」だという説が誤りだと分かります

「恋う」の万葉仮名は「故布」で甲類ですが
「乞う」の万葉仮名は「許布」で乙類です

つまり「恋う(故布)」と「乞う(許布)」はルーツが同じではないのです

そういう語源説を検証するためにも
奈良時代は今のような5母音ではなかったことを知る必要があります

留学生の院生たちに
奈良時代は今より母音が多かったと聞いたことはあるかと質問すると
そんな話は聞いたことがないとのことでした

まあ確かに実用日本語を教える先生方は
そんなことを教える必要はないのですが
日本語の基礎知識として話題にしても悪くはないのにと思いました
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使用機材→クリック
by zuoteng_jin | 2018-10-30 18:19 | Vitessa L | Comments(0)