2018年 02月 18日 ( 1 )

六世紀文選(もんぜん)編者の墓と受講生の新刊書

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自宅仕事机のわきにある書架の天板に漢籍があります

これは『文選(もんぜん)』全六〇巻と別巻一巻ですが
356年前の江戸時代寛文2年(1662年)刊行の現物です

『文選』は清少納言『枕草子』に「書(ふみ)は〔白氏〕文集・文選」とか
吉田兼好『徒然草』に「文は文選のあはれなる巻々」とかあるように
奈良平安鎌倉室町と盛んに読まれた古典です

巻一をめくるとこういう塩梅です
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中国で原文と割注が印刷された本を下敷きにして
数百年の間 日本で伝承されてきた返り点と送り仮名をつけて印刷されました

これはそれに数百年前の所有者が人名地名の朱引きをしてあります
(朱引きは最初の数頁だけです)

『文選』の編集者は二行目に見えるように
梁(りょう)の昭明太子 本名蕭統(しょう・とう)です

太子でしたが皇帝になれずに30歳で事故死しました(501年-531年)

実は昨日の朝日新聞に昭明太子の墓
確認されたというニュースが載りました

ただしこれは 何で今更ニュースになるのかと思いました

情報源は南京大学の張学鋒教授ですが
京大で学位を取った張先生は
2014年にすでに日本で報告しているのです

ただこのころはまだ仮説に過ぎなかったようで
それが確認されたのは2016年の南京考古学会だと聞きます
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右の墓穴が昭明太子のもので 左が太子の母のものです

その認定の決め手になったのは年号の入ったレンガの出土です
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左の普通七年は526年太子の母が亡くなった年ですし
右の中大通弐年は太子が亡くなった530年です

こういう事柄が分かると書架の漢籍も
グッと現実感が増してきます

今度朝日新聞がニュースにしたのは
たまたま張学鋒教授から画像の提供があったからでしょう

しかしつい最近確認されたかのような報道はいけません

マスコミの政治報道の劣化はここで言うまでもないことですが
文化記事の劣化も深刻だなぁと思った次第です
(裏付けしていないのが歴然です)

ところで昨日 大学学部時代の指導生から新刊書が届きました
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博士論文を書籍化したものですが あとがきには丁寧に
この分野に導いた私への謝辞がありました

それはともかく 15年前の指導生が
研究者として順調に成長している何よりの証しで
教員人生の冥利とはこのことです

by zuoteng_jin | 2018-02-18 17:59 | Comments(0)